銀行の信用力を悪用した不正融資被害

掲載日:2022年3月26日

私は1960年生まれ、現在61歳です。大学卒業後、大学病院勤務を経て、医療機器メーカーに勤務していました。現在は医療法人に勤務しています。
家族は妻、社会人の長女と大学生の長男の4人家族です。

スルガ銀行の融資物件はどれも優良物件

購入のきっかけは2015年、元同僚からの不動産業者Oの紹介でした。元同僚とは以前から親しい間柄であり、彼のことを信用していたこともあり、紹介を受けることにしました。不動産業者Oの担当者は、元同僚も不動産を購入し成功していると話した上で「融資をするスルガ銀行は、不動産賃貸業に精通しており、スルガ銀行が融資する物件はどれも優良物件です。そもそも優良物件でないと融資を実行しません。融資が出るような物件であれば安心です。」と話していました。加えて担当者からは、購入物件には1年間の家賃保証が付き、さらに引き渡しをする前に大規模修繕、空室のリノベーションを実施するとの説明を受けました。

自己資金ゼロの不動産投資に積極的なスルガ銀行

当時は自己資金がなく、不動産投資はできないと不動産業者Oの担当者に伝えましたが、自己資金は必要ない方法があるとの説明を受けました。詳細を確認したく、スルガ銀行主催の資産形成セミナーに参加してみました。セミナーでは、司会を務めるスルガ銀行の行員が「不動産業者Oは、スルガ銀行が推奨する不動産業者です。」と話しており、過去に十分な実績があり、顧客から評判の良い不動産業者であると説明していました。セミナーで、本当に自己資金なしで融資を受けられるのか否か、スルガの行員に尋ねたところ、スルガ銀行の行員は「ほとんどの方は自己資金を出したくないと考えています。相談に乗ります。」と返答しました。
スルガ銀行主催のセミナーに参加したことで、スルガ銀行が自信をもって自己資金なしで不動産資産形成を謳っていることを確認でき、不動産購入を決心しました。

フリーローンや定期預金、生命保険の加入が融資条件

2015年8月と9月、不動産業者Oから紹介された地方の中古マンションをスルガ銀行で融資を受けて、合計2棟購入しました。一棟目はスルガ銀行東京支店(担当:I氏、K氏)で融資を受け、融資額は3.75億円でした。二棟目はスルガ銀行名古屋支店(担当:M氏)で融資を受け、融資額は1.5億円でした。
両物件とも融資条件として、定期預金と積立定期預金、生命保険が提示され、加入しました。さらに二棟目においては、金銭消費貸借契約の際にスルガ銀行名古屋支店M氏より、金利7%のフリーローンの加入が融資条件となると説明されました。フリーローンは不要だとスルガ銀行名古屋支店M氏に伝えましたが、「本日中に契約書を上司に提出できないと困る。わざわざ遠方まで契約手続きに来ているのだから、手ぶらでは帰れない」など泣きつかれました。さらにフリーローン加入で2年後に金利を引き下げに応じることを約束すると、スルガ銀行担当者M氏に説明されたことで、フリーローンも契約することにしました。

悲惨な物件の実態

物件購入後の賃貸運営は非常に厳しい状況です。
一棟目の物件は、事前に説明されていた家賃は近隣相場より2割も高く設定されていたことがわかりました。加えて原状回復費は想定より非常に多額であり、とても利益が出る状況ではありませんでした。加えて大規模修繕に3000万円ほどの見積もりが届くなど、スルガ銀行が審査した事業計画の算定は誤りであったことが浮き彫りとなりました。
二棟目の物件は更に酷い状態です。この物件は、購入前から入居率が50%程度であることは承知していましたが、1年間の家賃保証があることに加え、購入から半年後に会社の寮として満室になる予定があり、空室のリノベーションはすべて不動産業者Oが行うと、同席したスルガ銀行名古屋支店M氏の前で約束していました。しかし実際は、会社の寮として使われる事は無く、半数以上あった空室のリノベーションは未施工のまま半年以上経過していた状況でした。不動産業者Oに問い合わせするも、担当者が退職したとの理由で要領を得ない回答しか得られませんでした。結局のところ、家賃を極端に下げて入居者募集をせざるを得ず、収支は当然赤字となりました。同時にスルガ銀行名古屋支店M氏にも連絡をとり、融資時の説明と異なる実態の報告と、今後の対応について相談をもちかけました。しかし要領を得ない返答ばかりでした。スルガ銀行名古屋支店M氏とは話もまとまらないうちに、M氏はスルガ銀行を退職してしまいました。

不正融資の判明

スルガ銀行からの情報開示資料では、全く利用されていない銀行口座に3,000万円の金額が記載されるなど個人の資産、銀行口座の偽造がありました。また賃料表においては、実際よりも入居率や家賃が水増しされていました。さらに登記原因証明情報を法務局で取得したところ、一棟目の物件において、売主と買主の間に、全く関わりのない業者が2社も介在したことが分かりました。

悲壮感漂う絶望的な日々

このような絶望的な状況の中、とあるコンサルタントに相談した際に「自死する人もいますが、それは死に損ですから、早まらないように。」と言われました。今にも死んでしまいそうな悲壮な顔であったとの指摘を受けました。この時期から会社での仕事に集中することができず、役職を追われる事態となってしまいました。物件購入時の年収からほぼ1/4以下となり、家族には迷惑を掛け続けています。自身も体調が悪い状態が続いています。
これまで銀行というのは、社会のインフラであり、信用できる機関だと信じていました。その銀行が、資産形成セミナーを開催し、金融・投資のプロの立場から、安全な資産形成であることを説明していました。そして今回物件購入をした不動産業者Oのことを、スルガ銀行はセミナーの場でビジネスパートナーとして紹介していたことが、融資契約の決め手となりました。不動産投資が初めてである自分はもちろん、セミナーに参加していた他の方々も、銀行が進めている不動産投資なら問題なく安全に取り組めると判断するのは当然であったと思います。そして銀行が推奨する不動産業者であれば、信用できると考えるのも至極真っ当だと思います。
結局、スルガ銀行は不正融資ができそうな顧客を探すためにセミナーを開催し、無防備で都合の良い顧客を見つけては不正融資を繰り返してきた最中、私も被害にあったのです。改めて考えてみれば、初めから融資金額ありきで、物件の収支もレントロールも物件の販売価格に合わせて細工されたものであったと思います。スルガ銀行主導で不動産業者を巻き込んだ詐欺事件だと考えています。
スルガ銀行は、2018年に金融庁から行政処分を受けたにも関わらず、その後の裁判外紛争解決制度においても、誠実さに欠けました。スルガ銀行は、個々人の状況を理解した上で真摯に対応すると公言したにも関わらず、何らそのような対応がされていないのが実情です。不正を認めながらも解決しようとせず、自己破産や自死にまでも追い込もうとしているスルガ銀行のあり方は、理不尽で極めて悪質です。早期に解決をしていただきたいと思います。

<編集部コメント>

金融機関に対する信頼を木っ端微塵に打ち砕かれてしまったIさん。心身ともに疲弊し、本業にも大きく支障が出てしまう程、窮地に立たされている状況です。スルガ銀行は頻繁にセミナーを主催し、銀行としての信用を悪用し、さらに悪徳不動産業者までも積極的に紹介し続けたことで、Iさんのような被害者が多数生まれてしまいました。
本件が解決しても、Iさんの失った役職や貴重な時間は戻りません。心的外傷に今後も苦しみ続けるかもしれません。それでも残りの人生を少しでも充実して過ごす為には、一日も早い解決が必要です。