スルガ銀行嵯峨社長
私はいつまで心療内科に通い続けなければならないのでしょうか?

掲載日:2022年10月17日

私は現在43歳です。2015年まで会社員として働いていましたが、現在は独立し、ITコンサルタントをしています。

心の病を発症

2014年にスルガ銀行から融資を受け、一棟マンションを購入しました。高齢の両親に仕送りをするために、給与所得以外の収入を得る必要がありました。その方法を模索していたところ、不動産投資のことを知り、マンション購入に至りました。
しかしこのマンション購入が、悲劇の始まりでした。購入後は、赤字経営の恐怖に怯える日々であり、いつ借金が返せなくなってしまうのだろうかという不安な気持ちを抱く毎日でした。心理的なストレスは徐々に私の心身を蝕み、遂には心の病を発症してしまいました。会社員としての仕事を続けることができなくなり、会社を退職する他に選択肢はありませんでした。
心療内科に通院を開始したことで、不安な気持ちは少しだけ和らぎましたが、今でも抗不安薬、向精神薬、睡眠薬の服用に頼らざるをえません。

購入経緯と厳しい物件運営

2013年11月、不動産投資に興味をもっていたところ、知人より不動産業者I 社(代表取締役:K氏)を紹介されました。そして2013年4月上旬、I社から一棟マンション購入の提案受けました。スルガ銀行の融資予定の物件であり、事業計画を審査した上で融資判断が行われると説明を受けました。金融機関のお墨付きの物件であることが決め手となり、物件購入を決意しました。I社に融資審査書類として、仮審査依頼書や源泉徴収票などの融資審査資料を送りました。融資審査は滞りなく進み、4月下旬にI社のオフィスで、スルガ銀行仙台支店の行員2名(支店長I氏、チーフマネージャーI氏)と金銭消費貸借契約を締結しました。融資額は2億3580万円でした。
当初の事業計画では、安定した家賃収入が見込め、スルガ銀行への返済も余裕を持って可能であり、親への仕送り資金も捻出できるということでした。しかし実際に運営を始めてみると、毎月40万円近い赤字からの運営開始を強いられました。その後は必死に入居者を募集し、入居率を高めることで負担を減らしましたが、それでも突発的に発生する空室の原状回復工事費用や固定資産税などの支払いを考えると、金銭的に極めて厳しい状況です。親への仕送りどころか、スルガ銀行へのローン返済にすら余裕など全く無い状態でした。

融資審査書類に多くの改ざんやねつ造

2019年3月、スルガ銀行に対して、融資審査資料の開示請求をしました。開示資料を見ると、目を疑うような改ざんの数々が見つかりました。例えば、通帳預金残高は原本よりも3000万円以上も水増しされていました。また売買契約書には原本よりも4000万円以上も高額の物件価格が記入されていました。事実と全く異なる資料が融資審査に使用されていたことが分かりました。

2021年5月、スルガ銀行に対して2回目の融資審査資料の開示を請求しました。すると新たな書類の改ざんが明らかになりました。特に家賃明細書における入居率は全く異なり、実際は26室の空室があったにも関わらず、スルガ銀行の開示資料ではたったの6室の空室となっていました。さらにこの偽造された家賃明細書の入居率と合致するように、20室分もの架空の賃貸借契約書が開示されました。
不動産賃貸業において、家賃設定や入居率は、事業計画を決定する上で非常に重要なものです。その根幹部分に関わる書類に、これほどの改ざんが明らかとなり、物件紹介時にスルガ銀行が事業計画を審査するとの説明そのものが、偽りの説明であったことが分かりました。

スルガ銀行の不正融資被害を受けて

スルガ銀行の不正融資は、不動産業者だけで不正行為を行なったのではなく、その裏ではスルガ銀行が主導していたことは明らかだと考えます。第三者委員会の報告書では、スルガ銀行の行員が関与した不正があったことが明記されています。またスルガ銀行が2019年5月に公表した報告書(投資用不動産融資に係る全件調査)によれば、融資書類の改ざんや偽造といった不正が認められた、もしくは不正の疑いがあるアパマンローン案件の債権額は約5200億円もあるとのことであり、通常の融資審査がほとんどなかったと明記されています。スルガ銀行が不動産業者に融資審査書類の改ざんを指示し、本来であれば融資ができないような顧客や収益物件まで融資対象として拡大していったのでしょう。
市場価格より大幅に高値で不動産を購入させられた不正融資被害者が、多く発生することになりました。物件の高値掴みについて、私の場合は、不動産業者に3500万円の利益を上乗せされていたことが明らかになりました。固定資産税評価額と比較をすると、1億円以上の高値掴みです。融資審査資料の改ざんなどの不正がなければ、そもそも審査そのものが通らなかったはずです。
一般に投資は自己責任といいますが、不動産購入においては、金融機関が融資承認を行わなければ、そもそも投資を開始することはできず、最終的には金融機関が投資判断を行っていると言っても過言ではないと考えます。その判断に用いられた融資審査資料において、売買代金の水増しや自己資金資料の改ざんなどが横行しており、それを容認していたスルガ銀行の責任は極めて大きいと思います。

スルガ銀行との交渉

スルガ銀行は不正融資の発覚後、ホームページに「シェアハウス向け融資およびその他投資用不動産融資に関する元本一部カットについて」というお知らせを掲示しました。そこには「今般、関係各所との調整を経て、シェアハウス向け融資およびその他投資用不動産融資に関する元本一部カットについて、個別のご相談を承る準備が整いました。当社の不正行為により、ご迷惑をおかけしたお客さまについては、裁判所の民事調停または民間ADR(裁判外紛争解決手続)機関の和解あっせん等により中立公正な第三者のご判断を経て、元本一部カットにつき真摯に対応させていただきます。」と明記していました。
この知らせを受け、民間ADR(裁判外紛争解決手続)を通じて、スルガ銀行と交渉を開始しました。多くの不正融資の証拠を提示し、1年もの歳月を費やしました。しかしローン金利や元本のカットには応じることはありませんでした。スルガ銀行は、金融庁からの指示で調停や民間ADRの席にはつくものの、不正融資被害者に真摯に対応をすることはなかったのです。

奪われた平穏な日々

私は苦しみから解放されるために、購入物件の売却を行うべく、いくつもの不動産業者を訪問しました。しかしそれは叶いませんでした。最も高額の売却査定額と比較してもローン元金と差額は5000万円以上でした。とても自己資金で補うことはできません。
今度は他の金融機関へのローンを借換えることで、ローン金利を下げる試みをしました。合計で8社の金融機関に相談しましたが、全て断られてしまいました。そもそもの物件購入金額と債務額が、市場価格よりもはるかに高いことが原因でした。その後もあらゆる手段を模索しましたが、根本的な解決方法は見つからず、完全に手詰まりとなってしまっています。
私はいつまでスルガ銀行に苦しめられ続けられるのでしょうか。私はいつまで心療内科に通い続けなければならないのでしょうか。
スルガ銀行の企業理念に、お客さまから「あってよかった、出会えてよかった。」と思われる存在を目指します、と書かれています。しかし私たち不正融資被害者には全く真摯に向き合おうとしません。社会インフラである銀行業を生業としている企業が、このような真摯さのかけらもない対応を貫いていることを全く理解できません。私はスルガ銀行に対して「あって不幸になった、出会わなければよかった」と心から思っています。
スルガ銀行の理不尽な対応について、世間の皆様に広く知っていただきたいです。監督官庁である金融庁においては、スルガ銀行の不正融資問題の責任を、より厳しく追及していただきたいです。
スルガ銀行が不正融資問題に真摯に向き合い、この問題を根本的に解決することを強く求めます。そして不正融資被害者が甚大な苦しみから開放され、平穏な日々が戻ることを強く願っています。

<編集部コメント>

スルガ銀行の不正融資被害を受けたFさん。スルガ銀行はFさんの心身の健康を蝕みました。Fさんは今でも心療内科で加療を受けなくてはなりません。
第三者委員会による調査報告や金融等からの業務改善命令を受け、2019年5月15日、スルガ銀行は、シェアハウス向け融資およびその他投資用不動産融資に関する元本一部カットについて、真摯に対応することを自ら公表しました。この知らせを受け、Fさんもスルガ銀行との交渉に臨みましたが、元本カットは実現しませんでした。私たち被害者同盟の中には、Fさんと同様、裁判所の民事調停または民間ADR(裁判外紛争解決手続)を通じてスルガ銀行と交渉した被害者が多くいます。不正融資により生じた被害の救済を求めましたが、まともな回答を得られた被害者は1人もいないのが実情です。
不正融資問題の被害者が平穏な日々に戻れる対応をしてこそ、スルガ銀行は真摯に対応したと世間に認知されるでしょう。スルガ銀行の信頼回復の為にも、1日も早い問題解決が望まれます。