スルガ銀行は被害者に信義ある対応を

掲載日:2022年11月6日

私は1975年生まれ、現在46歳です。大学を卒業後、サラリーマンとして勤務しています。妻と娘2人の4人家族です。

物件購入のきっかけ

2017年の秋、大学時代の先輩に誘われ、不動産業者Oが主催する資産形成セミナーに参加したことが悲劇の始まりです。セミナーの担当講師は、自己資金ゼロで不動産投資を始め、今ではサラリーマンを辞めて、不動産収入だけで裕福に生活をしているとのことでした。また不動産購入に際してはスルガ銀行から融資を受けたこと、スルガ銀行は貯蓄が少なくても収益還元法(家賃収入などの物件の収益性から物件価値を評価する方法)で高い評価の物件であれば自己資金の大小に関わらず融資が承認されること、他行と比較して融資実行が速く他の購入希望者よりも早く優良物件を購入できること、そして金利は少し高いものの優良物件であればローン返済も問題なく続けられることなどを、事細かにプレゼンしていました。不動産賃貸業の魅力以上に、スルガ銀行から融資を受けることのメリットを強調していたことが、強く印象に残っています。
またそのセミナーには、スルガ銀行で融資を受けて不動産を購入した方が多く参加していました。各々が実際の購入事例を紹介していましたが、皆一様にスルガ銀行が融資承認をするような物件を購入することさえできれば、不動産投資の成功者となれると豪語していました。
私の中では、スルガ銀行の金利は高い銀行との認識がありました。しかしセミナー講師達から「銀行としても、貸し倒れのリスクがあるような物件であれば、融資の承認をするはずはない。融資が承認された物件というのは、銀行からお墨付きを得たという意味で、信頼できる物件であると認識してよい。」との説明を聞き、スルガ銀行のお墨付きの物件に興味を持つようになりました。

物件購入とその後の運営状況

私をセミナーに誘った先輩から、主催者である不動産業者O(代表取締役:K氏)を紹介されました。そしてK氏から、北海道にある鉄筋コンクリート造4階建のマンションを紹介されました。セミナーで融資が通る物件であれば問題ないと聞いていたことから、スルガ銀行の融資審査を申し込んでみることにしました。すると審査は容易に通過しました。この段階で改めて、スルガ銀行がお墨付きを与えるような優良物件であったのだと思いました。
2017年12月、上記の一棟マンションを購入する売買契約を締結し、スルガ銀行から1.1億円の融資を受けました。なお融資申込はスルガ銀行新宿支店(担当:A氏、M氏)で行われました。スルガ銀行の担当A氏とM氏からは投資用不動産のリスクに関して詳細な説明はなく、書類の署名・捺印を指示されるのみで、指示に従い記入をしていきました。預金通帳の原本確認は行われませんでした。さらに融資条件として、定期預金口座、定期積立預金口座の開設と契約が必要と説明された為、指示に従いました。

いよいよ賃貸経営が開始となりましたが、すぐに優良物件の化けの皮が剥がれることになりました。
不動産業者O社の説明では、毎月の家賃収入で十分にスルガ銀行への返済をすることが可能であり、さらに返済後に残ったお金で将来に向けた貯蓄ができるということでした。ところが実際は全く異なりました。まず高い家賃の入居者が、購入後たったの3か月で一斉に退居してしまいました。空室を埋めるべく募集をかけましたが、不動産業者より言われていた家賃では入居者を見つけることができず、大きく家賃を下げる必要がありました。その結果、収益が大きく悪化しました。さらに購入物件の周囲は物件が乱立しているエリアであり、入居者を募集するにも多額の広告費用が必要となったのですが、この費用についても事前に知らされていませんでした。そして寒冷に伴う水道管破裂などで多額の修理費用が発生してしまい、貯蓄をするどころか、ローン返済の為に給与から補填しなければならない状況になってしまいました。

融資審査書類の改ざん・捏造などの不正行為の数々

早期に赤字経営となるような不良物件であったにも関わらず、どうして融資審査が通過したのか、その原因を突き止めるべくスルガ銀行に融資審査書類の開示請求を行いました。すると数多くの書類の改ざんや捏造が判明しました。
具体的には通帳残高の改ざんやレントロールの改ざん、物件概要書の改ざん、領収書の捏造などが挙げられます。特に預金残高については、自己資金が3000万円以上水増しされていました。自己資金ゼロと謳っていたにも関わらず、融資審査書類を改ざんすることで、潤沢な資金があると偽装されていたのです。
さらに私が購入した物件というのは、当初は私をセミナーに誘ってきた先輩が購入する予定の物件でした。しかし先輩は、当時別の不動産を購入しており、融資を連続して受けることが難しい状況とのことでした。優良物件の購入チャンスが流れてしまうのは惜しい話であり、このチャンスを後輩である私になら回したいと説得され、最終的に私が購入を決意しました。しかし実はこの先輩というのは、セミナー講師としてスルガ銀行で融資を受け物件を購入した事例を紹介し、セミナー参加者がスルガ銀行から融資を受けて不動産購入に至った場合、不動産業者からキックバックをもらっていた可能性が高いというのです。つまり私にスルガ銀行で融資を受けさせ物件を購入させることがそもそもの目的であり、優良物件を譲るという話は架空の設定であったと考えられます。もちろん先輩にキックバックをしていた不動産業者が、裏でスルガ銀行と結託していたことは、想像に難くありません。

家族不和、自殺を考える日々

私が購入したのは、融資審査が改ざんおよび捏造され、強引に融資承認された不良物件です。当初の計画と異なり収益性は低く、給与から補填して何とかスルガ銀行にローン返済をしている状況です。しかし貯金が底をつくのも時間の問題です。
物件売却も検討しました。しかしスルガ銀行と不動産業者により高値掴みさせられた物件です。実際の相場価格とかけ離れており、売却額との差額を補填する預貯金がありませんでした。
八方塞がりの状況で、日々預貯金が目減りしていく現実を目の当たりにし、多大なストレスから不眠やうつ状態となってしまい、仕事を続けることができなくなってしまいました。精神科で治療を受け、今では何とか復職したものの、現在もストレスに起因した頭痛や神経痛などの体調不良に悩まされ続けています。また閑職な部署に異動させられたことで、単身赴任とならざるを得なくなりました。
家族に多くの心配をかけてしまっています。妻はストレスから体調を崩しました。長女と次女は、経済不安から進学させてあげられないと説明していたことで、ストレスを原因とした蕁麻疹を発症するようになってしまいました。家族から明るい笑顔が消えました。不動産購入時に団体信用保険に加入しましたので、いっその事、自分が死ぬことで債務を帳消しにしようという考えが、何度も頭を過りました。家族を守る為に私にできる唯一の手段は自殺しかないと、今でも考えています。

スルガ銀行に対するメッセージ

過去の不正融資の事実は変えられませんが、スルガ銀行は不正を認め、被害者に誠実に向き合い、しかるべき償いをするべきです。スルガ銀行が信頼を回復し経営再建する為には、不正融資問題を避けて通ることはできません。不正融資問題を風化させようとするスルガ銀行の姿勢や、社会全体が不正を犯すスルガ銀行を看過してしまう態度は、日本の金融機関への信頼を失墜させ、金融史の汚点を残すことになるでしょう。スルガ銀行自身が被害者に誠実に対応することを切望します。

<編集部コメント>

スルガ銀行の不正融資被害を受けたKさん。スルガ銀行はKさんの健康を害したばかりではなく、ご家族までも不幸のどん底に落としました。
Kさんはスルガ銀行がお墨付きを与えたことを信用して、物件を購入しました。しかし金融庁からの行政処分にも明記されている通り、スルガ銀行の行員は、賃料や入居率などが実績値よりも高い数値に改ざんされ、収益還元法による物件評価を水増しされていた事実を認識していながら、融資を実行していたのです。これにより物件の高値掴み被害が発生し、Kさんのように購入後に収支が大幅に赤字転落してしまう事例が後を絶ちません。
Kさんが指摘している通り、不正融資問題の解決をなくして、スルガ銀行の信頼回復は困難です。経営再建の為にも、早期の問題解決が望まれます。