掲載日:2021年12月1日

病気の母親への仕送り資金さえも食い物にしたスルガ銀行

私は、現在44才です。

IT系の企業の管理職として働いています。家族は妻と小さい子供が3人います。近くに住む高齢の祖母の面倒を見ながら生活をしております。

管理会社からの連絡に怯える日々

私は2015年12月にE県にある鉄骨造3階建のマンション(12部屋)を1.15億円で購入する契約をし、そのためにスルガ銀行から諸費用も含めた1.18億円の融資を受けました。さらにその2ヶ月後、2016年2月にF県にあるRC造のマンション(24部屋)を2.29億円で購入する契約をし、そのためにスルガ銀行から2.36億円の融資を受けました。また、融資条件ということで同日に1000万円の無担保ローンの借入も行い、合計で3.61億円の融資を受けました。

現在は、契約当初にあったサブリース契約も解除されており、賃料の下落や度重なる修繕によりスルガ銀行への返済が非常に厳しい状況です。入居者に迷惑がかからないようにと、なんとか頑張って賃貸経営を行なっておりますが、退去や建物の不具合などのたびにかかってくる管理会社からの連絡に怯え、夜眠れないなどで仕事にも大きな支障が出ております。

“スルガ銀行のお墨付き”を信じて決断

そもそものきっかけは2015年10月頃に不動産業者のP社の営業電話がきっかけでした。その時の営業はFという人物です。当初はそんな大きな金額を借入し、毎月の支払額に対して将来的に返済を続けられるのか、アパート経営の経験もない中で非常に不安に感じたことを覚えております。当然、大きな金額ですので、自分なりに購入地域の人口の推移や、賃貸需要、災害情報などを調べてみましたが、最終的には、営業のF、その上司のSの説明により、サブリースが付いているから忙しいサラリーマンでも安心である、中古物件で家賃の下落もひと段落ついているので今後はそれほど下がらない、などリスクが低いと説明を受け、また、さらにP社の役員のKの説明で、何よりスルガ銀行がこの事業計画を評価しており、融資が可能だという点を強調されました。確かにお金を貸す側の銀行が事業計画にお墨付きをしているのであれば、間違いはないと思いました。しかも当時スルガ銀行は地銀の中でも群を抜いた業績、非常に先進的な銀行との評判でした。その銀行が事業計画を認めて融資をする、というのは購入を決意する上で一番のポイントでした。

なお、スルガ銀行の金利が4.5%であったため、金利が高いので他の銀行ではダメなのかと確認しましたが、地方で中古物件に融資が出来るのはスルガ銀行しかないので、スルガ銀行の融資とセットだと言われたこと、また購入後2年で金利の引き下げが可能になる、という説明もあり本物件の購入を決心しました。

また、この時私の母親の体調が悪く、母への仕送り額を増やしたいという思いもあり、サラリーマンの給料以外に収入を得られるということで不動産投資に興味を持っていたことも購入を決めた大きな要因です。

ファミレスで行われた融資契約

最初のE県の物件の売買契約は2015年12月、物件の確認をしに行った後、現地の駅前のホテルの喫茶店にて営業のFと、売買契約を行いました。また同日にPS社(P社の物件を管理する別会社と説明を受けました)とサブリース契約も結んでおります。なお、物件を確認した際は満室という説明を受けておりますが、2019年11月スルガ銀行から取り寄せた融資審査資料では賃料表の空室が1部屋存在していたことを確認しています。その1部屋は私とPS社にてサブリース予定となっており、見た事のないサブリース契約書が出てきました。

要するに建物全体のサブリースと空室のサブリースと言う二重のサブリース契約になっていたと言うことになります。

融資については売買契約を交わした翌日の夜20時、会社近くのファミレスにて行われました。スルガ銀行の行員はH支店のKという人物ですがこの時に初めて会いました。わざわざ契約のためにH県から平日の夜に銀行員が来るなんて、やはりスルガ銀行はこの融資に積極的であり、事業計画に問題がないということだと、改めて感じました。融資にあたっては、融資条件として、400万円の無担保ローンの契約、定期預金として150万円、積み立て定期として月7万円、月3万円の年金型保険の契約が融資条件だとFから説明を受けていたため、契約の当日もその流れでKと契約書の作成を行なった記憶があります。後になってわかったことでしたが、ローンを借りたお金で定期預金を作成することは歩積両建と言って、銀行法で禁止されている契約手法だそうです。

立て続けに提案された2物件目

2物件目のF県の物件は翌月1月入ってすぐ、P社のFから、さらに良い物件が出た、スルガ銀行の評価も出ているからまた購入してはどうかと言う話を受けました。2016年の2月に物件を確認しに行きましたが、その時も満室で中は見ることは出来ないと報告を受けています。後の2019年11月に開示請求した賃料表では3室の空室があったことを確認しており、開示された資料ではE県の物件同様にその空室は私とPS社との間でサブリース契約が存在しており、こちらも二重のサブリース契約となっておりました。

契約はH市にあるP本社の会議室にて行われました。この物件もPS社とのサブリース契約書にサインをしております。

融資については、今度はF支店のS、Wの2名がE県の物件の時と同じように、平日の夜20時に職場近くのファミレスまでわざわざ出向いてきて、こちらも非常に銀行が積極的で事業計画も非常に良いのだろうと思ってしまいました。また、こちらの物件も融資条件として、定期預金300万円、積み立て定期を毎月22万円、年金型保険月3万円に加入、1000万円の無担保ローンの契約が必要である旨をP社Fより説明を受けており、融資当日にこれらの契約を行なっております。こちらも銀行法に違反している契約ということになります。

突如届いた賃料減額の手紙

購入して2年経った2018年1月上旬にPS社からサブリース賃料の減額もしくはサブリース解除の旨の手紙が届きました。購入時はサブリース賃料が今まで下がったことはない、非常に安定したアパート経営が出来ると言われたことが全くの嘘だったということがこの時分かりました。なんと2017年のサブリースの運用実績は年間でマイナス500万円を超えているというのです。その時、初めて本当にやばい借金を抱えてしまった、自己破産もしくは自殺して団体信用生命保険での借入の返済など様々なことを考えて、夜も眠れない日々が続きました。2018年の1年はサブリース賃料の減額という形で何とかしてサブリース契約をPS社にお願いして締結させてもらいました。サラリーマン業がある傍ら、いきなり賃貸管理などとても出来ないと思ったからです。その1年の間に、銀行の借り換えを試みましたが、数十社の金融機関に相談しましたがどこの銀行も借り換えに関しては全く相手にされませんでした。また売却のために物件の査定をしてもらいましたが、2018年2月の査定でE県の物件は9500万円、F県の物件は1.6億円という結果で、購入した金額より合わせて1億円も低い査定に愕然としました。この時に算定した賃料からさらに現在は大幅に下がってしまっており、現在の査定はもっと下がると思われます。

なお、スルガ銀行に2019年11月の資料開示請求で数々の資料の改竄を確認した際に、書類の偽造についてP社の取締役のKに電話で確認を行いました。その際は今回の不正融資・文書偽造の件はスルガ銀行側から持ちかけられたスキームであると証言をしていました。

母親への仕送りのはずが、、、

今回、スルガ銀行融資物件を購入したきっかけですが母親への仕送りを行うために始めました。子供が3人おり、サラリーマンの給与だけでは住宅ローンの支払い、学費の工面、自身の年金など日々の生活だけで非常に苦しい状況でした。そこで、少しでも副収入を得て、母への仕送りを行いたいと不動産投資へ興味を持つようになりました。母は女手一つで私を育ててくれて、母自身も50代のころに癌を患うなど非常に苦労をしており、その後も通院を続けておりました。物件購入当初はスルガ銀行が提示した保険の契約や積み立て定期により厳しいが、2年経過すれば金利引き下げもできる、ということで当時評判の高かったスルガ銀行が認めた事業計画であれば安心だと完全にスルガ銀行を信用し物件購入を決断してしまいました。2年経過してこれから金利引き下げをと思っていた矢先、サブリースの賃料の引き下げを管理会社から提示され、その時は目の前が真っ暗になり、自殺も考えました。団体信用生命保険に加入させられていますので、その保険金で借金の返済を行おうと考えもしました。しかし小さな子供を残して死ぬことはできないと自殺を踏みとどまる事ができました。

2018年には母の容体が悪化し、入退院を繰り返すようになり、よりお金が必要となりましたが、購入物件の賃料が下がったことでそれどころではなくなってしました。結局、母は2020年に他界しましたが、仕送りをしたくて始めた不動産投資でしたが、結局母へは仕送りをしてあげることができませんでした。本当にこの件に関しては素人同然のサラリーマンを騙し高額な利益を上げ続けているスルガ銀行(このような状況でも既に5000万円以上の金利を払っています。その一部でも母の治療代に回したかった)を許せません。現在も多額のスルガ銀行のローンのせいで精神的に不安定になり、精神科の病院へ通い、薬を処方してもらいながら生活をしております。スルガ銀行は自社の営業成績のために多くのサラリーマンを不幸のどん底に突き落としている加害者だということを正しく認識し、真摯に被害者の声に耳を傾けてもらいたいです。早くこの苦しい状況から脱せられる日を心の底から願っています。

<編集部コメント>

お母さまへの仕送りをしてあげたい」「子供にしっかりとした教育を受けさせたい」という気持ちは誰もが共感できる理由です。

もちろん投資は失敗することもあります。
そこは自己責任です。

ですが、Mさんを騙すために数字を粉飾した資料を提示し、長期的に成立しえない水準のサブリースを提案する不動産業者や、そんな不動産業者の活動を支える仕組みをつくっていたスルガ銀行によって、Mさんは騙されたと言えるのではないでしょうか。組織的な犯行の犠牲者だと言えるのではないでしょうか。

そしてこの犠牲者がMさんではなく、これを読んでくださっているあなたや、あなたの親しい人であった可能性がゼロではないのです。

Mさんの手記からは、冷静に事態を分析してなんとか改善していこうと戦う気持ちと、お母さまに仕送りして上げられなかったくやしさやつらさが文章からにじみ出ています。嘘をついて前向きに努力する人を踏みにじる仕組みを野放しにしてよいのでしょうか?

苦しんでいる被害者の救済と、こうした悲劇が起こらない指導や仕組み作りが必要なのではないでしょうか。