スルガ銀行に奪われた家族の平穏

掲載日:2022年3月21日

私は1972年生まれ、現在49才です。メーカーに勤務しており、妻と中学生の息子の3人家族です。

スルガ銀行の強い勧誘により不動産を購入

2015年にスルガ銀行より優良会社として不動産販売会社O(オー)社を紹介され、スルガ銀行審査済の物件を2棟立て続けに購入しました。きっかけは会社の上司の勧めで参加したスルガ銀行主催の資産形成セミナーでした。セミナーではスルガ銀行とO社によるプレゼンテーションがあり、私は不動産経営は全く知識がありませんでしたが、簡単にできるので心配無いと強く勧誘されました。セミナーの内容は以下の通りです。
・未経験のサラリーマンでも、2棟、3棟購入できる。
スルガ銀行の融資審査は、最短3、4日
・不動産管理は地元の管理会社に任せれば、自分で物件所在地に行くことはない。
・家賃収入が減ったら、買い増しして収支を改善できる。
・地方の30年近い築古物件を推奨。
・今は不動産購入が大人気なので、物件を見ずにすぐに購入した方が良い。
後で冷静に考えると滅茶苦茶な説明でしたが、東証一部上場の銀行が勧める不動産物件と販売会社、今が買い時という言葉を信じてしまいました。
スルガ銀行の担当行員H氏からは、「O社は優良販社で、物件は当行審査済みです。チャレンジしましょう!」「続けて次の物件もチャレンジしましょう!」「3,4棟目もチャレンジしましょう!」と再三「チャレンジ」を勧められました。老後資金の資産形成の為に、早めに資産運用をした方が良いという囁きに対し焦りもあり、2棟の物件購入に踏み切りました。

問題だらけの物件、スルガ銀行と不動産販売会社の通謀

賃貸経営など未経験で何もわからないままスタートが切られましたが、2棟の物件には契約直後の引き渡しから深刻な問題があり、今でも問題だらけです。
1棟目は茨城県にある鉄骨3階建の物件(築28年)で、約束の修繕工事が完了しないまま引き渡され、その後やむなく自分で工事業者に依頼し自費を投じ完成させました。予定の工事が完了しなかったため、賃料を融資審査時の設定よりも下げざるを得ませんでした。少しでも元々の家賃設定に近づけるため、毎週末茨城の物件まで片道2時間かけて通い自分で修繕を繰り返しました。また入居者を増やす為に多額の費用を掛けて各部屋に新しい設備を導入しました。家賃収入が入る前の出費でとてつもなく不安になったのを今でも覚えています。その後O社による空室保証期間1年の約束が、O社の一方的な通達で短縮されました。それもまた不安が大きくなった一因でした。
2棟目は北海道の鉄骨3階建(築27年)で、立地的に大学生の需要しか見込めない物件です。最初に大学の生協に学生への斡旋のお願いに行きましたが、「管理が悪く老朽化しており、学生に紹介できる物件ではない」と言われてしまいました。状況を改善するため、空室が出るたびに、新規入居者に来て頂けるようフルリフォームを繰り返していたので、物件購入以来常に収支はマイナスです。また物件の老朽化が激しく、毎年、屋上防水工事、外壁工事、漏水工事、共用玄関の工事をしており、各部屋の修繕と合わせて毎年多額の修繕費が発生しています。
購入直後に相談した税理士からは、「築古の物件を異常な高値で購入させられ、売却したら負債だけが残る。運営し続けても、賃料低下と大規模修繕費用がかさみ、近いうちに破産が予測される」と言われました。メガバンクに相談に行った際も「不正な貸し付けの可能性が高く、破産の可能性が高い、金融庁に相談すべき内容」と言われました。市の法律相談では、弁護士の方から「スルガ銀行が主催のセミナーで、同行が紹介した不良販売会社と共に素人を嵌めた通謀が成立する可能性が高い」と言われました。他にも不動産関係者、弁護士、金融関係者に相談しましたが、どの専門家に相談しても、「スルガ銀行と販社の共謀だ、近々破産に追い込まれる可能性が高い」と言われました。不動産会社の査定によると、2棟とも相場の価格よりも2倍近い値段で購入させられていたことを知りました。
スルガ銀行から入手した融資審査時の資料により、私の資産が3,000万円も多く改ざんされ審査されていたこと、物件概要に虚偽があることなどを知り、それらはシェアハウスの不正融資問題と同様の手口での不正であることを知り、愕然としました。

不安による睡眠障害、過去の疾患再発、愛する家族との関係崩壊・・・

それからは毎晩、入眠後2時間ほどすると、大量の汗をかいて目を覚ますようになりました。一度目が覚めると眠れなくなり、「借金の完済方法」「自殺」「家族への償い」だけが繰り返し頭に浮かび、そのまま朝を迎えるようになりました。破産の恐怖で、10年間おさまっていた消化器の潰瘍が再発し、堪え切れないほどの痛みに襲われました。当然仕事にも集中できなくなり、睡眠障害の影響もあって2か月ほど会社を休職しました。その頃から心療内科を受診するようになり、今も通い続けています。
極力考え込まないよう気を付けていましたが、家族と一緒にいる時にちょっとしたことがきっかけで関係が壊れていると感じるようになり、そんな時はふと「死にたい」「消えてなくなりたい」という思いが自然に湧いてきました。人生のマイナスを清算できるチャンスがあれば、自分などいつでも消えていいと今も思っています。
小学5年生まで私と手を繋いで歩くこともあった息子は、借金のことを知って以来、私との一切のコミュニケーションを断ちました。今も会話はゼロです。同じ食卓にも決して着きません。妻はスルガ銀行の不正融資問題を知って以来、笑顔が消え、部屋に引きこもるようになり、全く別人のようになってしまいました。家族はもはやバラバラです。あの時スルガ銀行と関わらなかったらと常々考えます。家族の幸せの為と思って結んだ契約がきっかけで、家族がバラバラになるとは夢にも思っていませんでした。今は自分が何のために生きているのか全く分かりません。唯一意味を見出すとしたら、不安と恐怖に陥れ、傷つけてしまった家族への償いだけです。
奪われた家族の時間は取り戻せない。せめて元の平穏な生活に家族で戻りたい。昔のような家族の笑顔に会いたい。一瞬でも早く、この巨額の借金地獄から抜け出したい。今の願いは、ただそれだけです。

<編集部コメント>

家族の将来の為と思って踏み出した一歩が、家族の笑顔を奪ってしまった。ただただ、家族の笑顔を取り戻したい。そんなHさんの悲痛な想いが胸に刺さります。真面目に働き、納税で国を支え、必死に家族を支えている人を甘い囁きで騙し、借金地獄に陥れ、自社利益を貪る悪質な銀行、業者に強い怒りを覚えます。
Hさんがまたご家族と一緒に笑い合える日が1日でも早く来ることを切に願います。