詐欺的不正融資で個人を追い込むスルガ銀行
私は昭和53年生まれ、現在43歳です。妻と子供2人の4人家族です。大学院を卒業後に就職し、転職を経て、金融機関の管理職を務めています。
私は2016年12月に大阪府にあるマンションを2億5000万円で購入する契約をし、そのためにスルガ銀行から2億2500万円の融資を受けました。更にその1ヶ月に同じく大阪府にある他のマンションを1億8700万円で購入する契約をし、同行から1億6800万円の融資を受け、合計で3億9300万円の融資を受けております。
この巨額のローンは全て、シェアハウスやその他不動産投資向けで発覚した、スルガ銀行による不正融資だったのでした。現在私は、そのローン返済のため苦しみ続けています。物件の収入だけでは返済が全く間に合わず、老後の為に貯蓄してきた預金を取り崩しながら返済をしている状況です。私と家族の人生はどうなってしまうのかと不安に苛まれ、不眠やストレスで情緒不安定になり、生命保険金で借金を清算するしかないなどと最悪の状況ばかりを考えてしまい、精神が崩壊してしまいそうなほどに苦しんでおります。
老後の生活や年金問題に不安を感じて
きっかけは、老後の生活不安に備えようと色々と調べている中で目に留まった資産形成のブログ記事でした。2016年11月に、そのブログで案内されていた不動産会社H社へ訪問しました。同社U社長から、会社の概要と、過去実績として成約したいくつかの物件資料を提示されました。その際に「当社が紹介している物件は既にスルガ銀行に評価してもらっているもので、融資も同行から受けられます。スルガ銀行であればフルローンやオーバーローンも受けられ、手元資金ゼロで全額融資で物件購入可能です。スルガ銀行であれば融資はスムーズにおりますよ。」と説明されました。翌日、U社長からスルガ銀行評価済み物件を紹介され、物件概要及び収支シミュレーションを提示されました。物件については「入居率が高く高利回りで毎月の収支はプラスになります。当社管理期間中は家賃保証があるから安心して経営ができます」との説明を受けました。物件も良く長期の家賃保証があること、また何よりスルガ銀行は投資用不動産の融資で他の銀行よりも圧倒的な実績があり、初期費用不要のフルローンで購入が可能であることから、物件の購入を決断しました。購入の旨をU社長へ伝えると、数日後に「スルガ銀行の融資審査が通りました。来月に売買契約と融資申込を実施しましょう」と、驚きのスピードで手続きが進められました。
スルガ銀行と不動産業者の手慣れた契約の流れ
2016年12月に、東京駅近くの喫茶店で1棟目の売買契約と融資申込が同時に実施されました。まずH社と売買契約の締結を行いました。その途中でスルガ銀行広島支店N氏と大阪支店K氏が到着しました。スルガ銀行が必要とする各種融資審査資料は全てH社経由で提出していたため、同行の担当者と会うのはこの日が初めてでした。なぜ広島支店の担当者も同行するのかと少し疑問に思いましたが、特に説明なども無く、とても手慣れた流れで売買契約手続き後の金銭消費貸借契約(金消契約)へ移りました。私から、スルガ銀行とH社はどのような経緯でこの物件を私に紹介するに至ったのかを尋ねましたが、行員K氏より「色々な取引をさせて頂く中で、Nさんに優良な物件と思い案内させて頂いています。中々このような高額な物件を購入できる方はいらっしゃいません。」とだけ説明されました。
また契約の際、私は希望しませんでしたが、融資の条件となっているとの説明で、1,000万円の無担保ローン、生命保険の加入、定期預金および積立預金の開設、スルガ銀行のクレジットカード作成を同時に申し込みさせられました。
程なくして、H社のU社長から、スルガ銀行評価済み物件2棟目の紹介を受けました。1棟目と同様に、初期費用不要のフルローンで購入が可能、入居率が高い優良物件、長期の家賃保証、等の説明を受けました。私は、H社より1棟目を購入した際に、同社がスルガ銀行と深い関係があることを実感して同社を信用していたこと、1棟目購入時にスルガ銀行より融資を受けており、今回も問題なく融資が受けられるとU社長から後押しされたこともあり、2棟目も購入を決断しました。購入の意思をU社長へ伝えると、1棟目と同様に短期間でスルガ銀行の融資審査が通ったとの連絡を受け、売買契約と金消契約を勧める流れとなりました。
2棟目の売買契約と金消契約は、2017年1月にスルガ銀行大阪支店にて実施されました。売買契約締結後、不動産会社H社の担当者が同席の下、スルガ銀行大阪支店融資担当者のM氏、S氏とアパートローン申込み、金消契約、定期預金、生命保険等の契約を締結しました。1棟目と同様、契約当日までは、融資の説明などのやり取りは全て不動産会社H社を通じてしており、融資担当者とはこの時初めてお会いしました。
収益計画の虚偽の発覚と、スルガ銀行の冷遇
物件購入時にH社から説明された計画では、購入物件から毎月総額約270万円の賃料が見込まれる一方、スルガ銀行への返済は200万円程度なので、十分採算が取れるとの話でした。ところが実際は、退去が相次いで入居率はどんどん低下し、更に大規模な修繕などで多くの出費が発生しました。平均月収は2棟合わせて180万円程度で、当初計画よりも約90万円も低く、家賃収入でスルガ銀行への返済すらできない状況です。
このままでは返済が滞ってしまう為、スルガ銀行に対し、H社による物件収支の計画と実態の乖離が大きく毎月の返済額にも満たず苦しんでいることや、物件運営の窮状、更には売買契約と金消契約に至るまでは全てH社とスルガ銀行の担当者が会話をしていたことなどを含め、返済方法変更等についての相談を持ちかけたものの、全く耳を傾けてくれませんでした。私はやむなく、老後の為に貯蓄してきた預金を取り崩しながら返済に充てねばなりませんでした。
スルガ銀行による不正行為
私が物件の運営に苦しんでいる中、シェアハウス「かぼちゃの馬車」事件が明るみになり、スルガ銀行による多数の不正融資が実行されていたことを知りました。私の物件購入の際にも不正融資が行われていたのではないかと思い、スルガ銀行に対して資料開示の請求を行い、真偽を確認致しました。
スルガ銀行から当時の融資検討資料を取り寄せ、専門家に確認を頂いた結果、以下のような多くの不正が指摘されました。
1.自己資金確認のための通帳等の原本確認を行なわずに、業者が提出した自己資金改ざん資料での融資承認行為を行っていた。
2.自己資金改ざん資料に「原本の写しに相違ありません」という虚偽の記載と行員の捺印があった。
3.レントロールが改ざんされており、各部屋の共益費、現況月間収入、満室時月間収入等が高く設定された内容で融資審査が行われていた。
4.空室賃貸保証に関する覚書の保証金額の内容と、業務委託業者名等が改ざんされていた。
5.物件の売買価格が市場の相場よりも不当に高く設定されていた。
6.司法書士からの適正な本人確認が無く、一度も司法書士にお会いすることも無く、適正に購入の意思確認をしていない登記手続きでの決済手続きであった。
7.融資条件として無担保ローン、定期預金等の契約(抱き合わせ融資)。
これらの指摘点を知り、私は愕然としました。かぼちゃの馬車事件発覚以前、地銀の優等生として金融庁からお褒めの言葉を頂いていたスルガ銀行は、顧客重視で顧客に寄り添う企業理念を掲げ銀行運営を行うと告知しておりました。然し、社内規定でも自己資金の確認のため原本の確認をするように指示指導されていたにも関わらず、まさか建て前と本音を使い分け、利益重視、業績重視で一般市民を騙す為に行員みずから詐欺加担し不動産業者に改ざんを指示していたとは、夢にも思いませんでした。下図は上記1.に該当する資料ですが、このような行為は、有印私文書偽造又は背任の不法行為にあたると思われます。
この詐欺スキームによって、私の平穏な生活は一気に過酷な生活へと変貌し、自己破産か自殺して生命保険金でスルガ銀行に返済するか二者選択を迫られている状況です。
コンプライアンスや顧客保護を優先して業務を遂行しているはずの銀行が、非常に多くの不正を働いていたこと、また銀行と不動産業者が結託して行わなければ実現し得ない詐欺的スキームにより多数の不正融資を実行し、消費者に甚大な被害をもたらしたことは、到底看過することは出来ません。徹底した原因追及と被害の回復、再発防止を強く求めて行きたいと思っております。
<編集部コメント>
Nさんはスルガ銀行の過度なノルマを達成するための犠牲になり、ここまでの仕打ちを受けることは思いもよらないことだったのではないでしょうか。スルガ銀行による不正融資は、経済的負担を仕掛けて破滅に追い込み、被害者の心を蝕み、家族の仲も引き裂いてしまいます。被害者の早期救済が望まれます。