「お父さん、いかないで」
掲載日:2021年10月8日
私は、1967年1月生まれ、現在54才です。現在東京在住です。
医科大学を1991年3月に卒業し、2021年7月現在も勤務しています。
病院に入職してチーム長として働いています。
不動産購入後すぐに業者との連絡が途絶える
私は2015年6月に愛知県清須市にある築30年鉄筋コンクリート造4階建のマンション(物件1)を不動産業者Aから1億8200万円で購入する契約をし、そのためにスルガ銀行から2015年6月に1億6300万円の融資を受けました。家賃収入は154万円でサブリース後の賃料が138万円ですと不動産業者Aは言いました。計算すると実質利回りは満室で9.4%でした。不動産業者Aは頭金に相当する1900万円を私が払うという前提で通帳の偽造を行い、コピーをスルガ銀行に提出していたようです。実際、私は頭金を払っておりません。不動産業者Aから初期費用は0円ですと説明を受けていたからです。買主が手出しなく買えるという状況を作り出すために契約書上の売買金額を水増ししていたのだと思います。契約後に不動産業者Aが私に家賃を振り込んだのは2回だけで、その後連絡が途絶えました。不動産業者Aと連絡が取れなくなったことで初めて私は騙されたのではないかと感じたのです。何とか物件1の現地管理会社を突き止め、実際の賃料は月125万円であることを知りました。この時にレントロールの水増しと不動産業者の計画的踏み倒しを知ることになります。実際の賃料に加え、月13万円も水増ししたサブリース額を私に支払っていたのですから。。。サブリースが停止するのは時間の問題であったのです(その後かぼちゃの馬車事件が報道され同じスキームで多くの被害者がおられること見聞きし、スルガ銀行の組織的関与を知ることになるわけです)。
スルガ銀行への疑念
私は融資担当のスルガ行員Uに電話し、不動産業者Aが逃げたこと、レントロールの水増しがあったことを伝えました(この時私はスルガ銀行もグルであることに気づいていませんでした)。その時のUの対応はそっけなく、「そうですかぁ」といった感じでした。私がそう感じたのは金消契約の時のUの発した言葉が記憶にあったからです。融資の条件は不動産業者Aがサブリースすることです、と私に言ったからです。今考えてみれば、サブリースにすることで融資をしやすくする、さらにそのサブリース賃料を水増しすることで融資額を引き上げるのが目的だったのでしょう。スルガ銀行は業者とタッグを組み、業者の不正を知りながら、知らない「ふり」をし、すべての責任は買主(投資の自己責任)と不動産会社(銀行をだます)にあるという「てい」を作るために伏線を張っていたのです。つまり後から問題になっても最初から銀行は関与していない、悪いのは不動産業者と債務者だと主張できるよう、周到に証拠を残さないよう組織的に行動していたのです。スルガ行員はわかっていたんです、提出書類が捏造されているものだということを。買主の通帳残高や収入証明書などをコピーで行い、原本確認は一切行ってないという事実こそがゆるぎなき証拠です。わざと原本確認しなかったのです。確信犯なのです。自己資金などないことをわかっていたんです。スルガ銀行はあくまで自分たちも騙されたんですと主張できるように周到に伏線を張ったのです。スルガ銀行は債務者との連絡はすべて電話でおこない、証拠の残るメールは一切使おうとしませんでした。おそらく銀行上層部が行員にそう指導していたのでしょう。中にはメールアドレスを持っていないんです、などとうそぶくスルガ行員もいました。しかし買主は今後30年もローンを払っていくことになるのです。少なくとも銀行員としての良心、いやそれ以前に罪の意識のある人間であれば、本来借りられない、返済能力のない人に「貸さない」という判断ができたはずです。返済能力がないとわかっていて、書類が偽装されたことをわかっていて、、、証拠(業者の提出したコピーが改ざんされているはずがないという性善説の悪用)がないから貸してしまえという、、、確信犯的行為をスルガ銀行員だけでなく、審査部、役員までがわかってやった事実は到底許すことができません。
第三者調査委員会報告書から見えてきたこと
第三者調査委員会の資料にはスルガ上層部から行員に対する厳しい貸付ノルマとパワハラがあったと記載があります。スルガ銀行の社風が本来善良であったはずの行員をもマインドコントロールし不正融資に関与させたのではないでしょうか。そうでなければ私を始めとして100人以上の被害者が出るはずもありません。スルガ銀行が銀行という看板を利用して悪徳不動産業者とタッグを組み、多くのサラリーマンに返済能力を超えた借金をさせ、責任は債務者に押し付けるという、いわば大規模な金融詐欺を行ったのです。そうでなければ1億円以上の融資が焦げ付くかもしれないという状況にもかかわらず、債権者として平静を装えるわけがないのです。たとえ買主が破産したとしても融資担当者には関係ないのです。スルガ銀行は関係ないのです。だから4.5%という高い金利を取ることで早期にリスクを回収しようとしていたのです。これではサラ金と変わらないじゃないですか!スルガ銀行という金融庁が後ろ盾していて全国展開している金融機関、だからこそ、その行員のいうことを債務者は信じたのです。銀行は高い透明性と公平性のもと債務者の調査と担保評価を行い、債務に見合った融資をする「コンプライアンス」というものがあるのが当然の組織のはずです。その銀行が意図的に(いや恣意的にといった方が正確かもしれません)与信を偽造し、不正融資を行うなど誰が予見できるでしょうか。かぼちゃの馬車事件が発覚するまでは買主は自己責任と考え、ある者は必死に頑張り、ある者は自己破産を決断し、ある者は死を選んだのです。今多くの債務者たちは団結し、返済停止をスルガ銀行に申し入れました。スルガ銀行は今だんまりを決め込んでいます。多くを話せばぼろが出るのでしょう。しかし用意周到な彼らもどこかに証拠を残しているはずです。私たち債務者はお互いに団結し、弁護団とともにそれを暴こうと頑張っています。
次々に襲い掛かる巨額の修繕費
話を戻します。物件1の賃料は月125万円でした。年間120万円の固定資産税とローン返済91万円を引いても月20万円はプラスになる計算だったのです。しかし築30年の鉄筋コンクリートマンションを30年ローンで組む恐ろしさをこの後知ることになります。購入して2か月目にマンションの給水ポンプが故障しました。夏の暑い時期だったこともあり入居者さんにはご迷惑をかけてしまいました。ポンプの故障に100万円かかりました。次に起こったのは浄化槽のポンプの故障です。これは浄化槽が正常に機能するためのポンプで、故障のため悪臭がひどいと入居ささんから苦情が来たのです。これも交換し100万円がかかりました。さらに追い打ちをかけるように給水管の破裂による水漏れ事故が頻発しました。このマンションには床下がなく、コンクリートで給水パイプを埋めていたのです。そしていったん漏水が起これば、検査修繕が1か所につき70万円~80万円程度かかります。このような水漏れ事故が年間2,3回起こるのです。前のオーナーが手放したのもそれが理由ではなかったのかと今では思います。それでも何とか本業を頑張り返済をしていました。
スルガ銀行から不動産購入を勧誘される
このような状態が約1年続いた2016年6月初旬、スルガ銀行の行員Tから私の携帯電話に電話がありました。資産形成のため1棟マンションを買いませんか、当行が後ろ盾しますというものでした。私は前回の件もあり、とんでもない物件を買わされてしまった。U行員もまともに取り合ってくれなかったと言いました。すると行員Tは、すみませんUは私の部下です。電話させますということで電話を切りました。その後行員Uからと思われる不在着信があるも私は出られませんでした。その後再度Tから電話があり、先ほどUからご連絡させてもらいましたとのことでした。続けてTは、不動産会社を紹介します、ご検討されてくださいと私に告げ、電話を切りました。
スルガ銀行に紹介された不動産会社
不動産業者Pから電話があったのは2週間後でした。横浜の好立地の優良物件がでたのでぜひご紹介したいとのことでした。職場まで来てくれるというので、会うことにしました。やってきたのはジャケパンに高級ブランドのバックを持った2名の不動産業者Pの社員でした。いかにも怪しげな人たちでしたがスルガ銀行の紹介できましたということもあり、話を聞くことにしました。不動産会社Pはここ5年で急成長しており、中古1棟マンションを年間100棟以上販売しているとのことでした。私は週末に物件2を見に行くことにしました。物件2は横浜駅の支線から徒歩4分の、確かに好立地にある表面利回り7.5%、築25年の1棟マンションでした。業者Pは楽待のホームページから周辺の物件相場を見せ、立地から考えるとお得ですよと言いました。価格は2億2000万円でした。私は確かに利益が出そうだが、固定資産税の評価額が1億円程度でしかないことを質問したところ、不動産業者Pはそんなもんですよ、むしろ固定資産税の支払いが安いのでいいじゃないですかと説明しました。同年6月末にスルガ銀行日本橋支店にて2億1700万円の融資を受けました。融資の条件として債務と同額の生命保険に入りました。生命保険の月の支払いは8万円でした。また物件2を購入した際に3000万円のフリースタイルローンを契約しました。名目は株を買うことにしてほしいということでした。
立て続けに3棟目購入を勧められる
月が替わり7月になり、不動産業者Pより徳島物件(物件3)出ましたとのメールがありました。徳島駅から徒歩7分の鉄筋コンクリート7階、44室の大規模単身者向けマンションで入居者の8割は徳島大学の学生さんでした。満室表面利回りは10%で44室中7室が空室でした。私は先月買ったばかりなのにさすがに無理ですよと返答しました。すると業者は前回購入から3か月以内であれば、前回の審査資料がそのまま使えるので、むしろチャンスですと言いました。さすがに無理だろうと思った私は審査だけならいいですよと答えました。1週間後不動産業者Pより連絡あり。融資通りましたとのこと。正直これは無理だと思いました。しかし50歳を目前にしていた私は融資を受けるチャンスはもうないとも思っていました。7室の空室については不動産業者Pが賃料の70%、1年間まで補填しますとのことでした。1年あれば入居率を上げますとも言いました。私は2016年7月スルガ銀行日本橋支店で1億9800万円の金消契約を結びました。
「お父さん、いかないで」
当初総額5億4000万円のスルガ銀行への債務に対して毎月310万円の支払いをしていました。家賃収入は月350万円。固定資産税の支払いが年間320万円ありましたので月13万円のプラスキャッシュフローでした。5年後の現在の賃料収入は260万円まで下がっています。もともと築古マンションでトラブルが多く、水漏れなどの高額の修繕費がかかること、コロナの影響で物件3に関しては学生需要が激減(授業がオンライン化したため)し入居率が50%になったことが原因です。現在は毎月赤字が50万円出ている状態です。すべての責任は自分にあると考えた私は医師としてアルバイトを始めました。給料の良い救急病院の夜勤当直です。これを週2回始めました。さらに第1、第2、第4土日は通しの当直バイトを始めました。現在自宅から勤務している病院までの通勤が2時間かかり、夜間の呼び出しなどがあることもあり、平日は病院の周囲にアパートを借りて生活しています。家族と会えるのは月1回という生活がここ3年間続きました。子供は3人おり、下の娘は先日小学生になりました。月に1回会い、別れるとき毎回「お父さん、いかないで」と泣きじゃくり、懇願されるのが一番つらいです。子供が父親を一番必要とし、父親として一番そばにいてやらなければならないときにそれができない、、、。上の子供は双子で小学校4年生になりました。自分たちの家はお友達の家とは違う(父親が家にいない)ことには気づいているようです。妻は何も言いません。妻とは職場結婚で私の仕事をよく理解してくれています。子供にもお父さんの仕事は大変なのよ、と言ってくれています。妻にはスルガの話は詳しくしていません。物件2を買おうとした際に一度だけ妻に相談したことがあり、その時に妻は反対したからです。妻は公務員の家庭で育った質素な女性です。億単位の借金をするなど想像できなかったのでしょう。以前かぼちゃの報道があった時に、あなた大丈夫なのと聞かれたことが一度ありました。その時は心配するなと答えました。すべては自分の判断で行ったことです。私は妻と子供に恵まれました。もう何もいりません。私がもし自己破産したとしても家族は私についてきてくれるでしょう。だから私は戦うことを決意しました。私の家族を路頭に迷わせようとしている原因を作ったスルガ銀行に対してです。
借金返済のために夜勤のアルバイトを行う
私は今54歳になります。体に鞭を打ってアルバイトをし、何とか返済を続けてきました。60歳になっても、65歳になっても今の頑張りを続ければ・・・何とかなると信じてきたのです。しかし最近それができなくなることが確定しました。2024年から導入される医師の働き方改革法案です。これが導入されると時間外勤務ができなくなり、違反すると勤務先がペナルティーを受けることになります。これまで通りアルバイトを続けた場合、監査等で指摘されれば勤務先の病院に迷惑をかけてしまう。これまでの様にアルバイトで収入を維持することができなくなるのです。その時私は57歳。まだまだ働けると思っていたのがそうではなくなるのです。あと3年・・正直自殺も考えました。一時期は「死ぬか死なないか」ではなく「どう死ぬか」を考えていました。医師である私はどうやって死んだら一番楽に死ねるかを知っています。それは首を吊ることです。首を吊れば頸動脈の血流が遮断され数秒で意識を失います。どこで死ぬかも考えました。アパートで死ねば大家さんに迷惑がかかります。それは入居者が自殺すればその部屋は事故物件となり賃貸募集ができなくなるからです。私の徳島の物件でも入居者さんが死亡された部屋が2つあります。一つ目は病死、2つ目は自殺でした。そうしているうちにスルガ銀行による不正融資の被害者弁護団が立ち上がったという記事をネットで知りました。電話で問い合わせをし、説明会に参加しました。そして私もほかの被害者の方たちと同じ様なスキームでスルガ銀行により騙されていたことを確信しました。
最後に、私の様な被害者はほんの一握りであり、もっとひどい目に合っている方も多くいらっしゃると聞いております。ここに被害者たちの気持ちを少しでも汲んでいただきたく、ここに述べさせていただいた次第です。最後に長文になりましたことをお許しください。